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更年期障害について

女性ならだれでもさけてとおれない更年期。
もともと更年期というのは、性成熟期と老年期のちょうど境い目の時期にあたります。(更年期は、climacteric disordersという風に英語では表現されますが、これはもともとギリシャ語で「梯子(はしご)」という意味で、老年期への架け橋という意味です。)
また、WHOでは
「性成熟状態から、卵巣機能が完全に消失するまでの期間」と定義され、IMS(国際閉経学会)によると、「女性の加齢に伴う生殖期から非生殖器への移行期」とされています。


個人差はもちろんありますが、一般的には日本人女性ですと45歳〜56歳くらいのことが多いです。
ちょうど、卵巣からでるエストロゲンという女性ホルモンが急激に低下することによってさまざまな身体的・精神的な変化がおとずれます。
なので更年期という時期は誰にでもあるのですが、ここで、何かの症状がでてくると、更年期障害というふうにいうのです。
更年期障害とは、正式には
「更年期にあらわれる多種多様の症候群で、器質的疾患に相応しない、自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とする症候群」と定義されています。
更年期障害は非常に個人差が強く、ほとんど症状のない方から、生活に支障がでるほど強い症状がでることまでさまざまです。また、同時期に社会的・家庭的環境の変化などもおこりがちです。また、もともとの性格などにも影響されるため人によってはとても強い症状がでることがあるのです。一説では、日本人女性の半分以上に更年期障害の症状がでるといわれています。

では更年期障害の症状とはどのようなものが多いのでしょうか。
女性ホルモンの低下により、強くでる症状は、動悸、ほてり、発汗、冷え、不眠とされています。
また他に、いらいら、不安、うつ、無気力、易疲労感、視力低下、めまい、頭痛、肩こり、しびれなどもよくみられる症状です。
また、すぐにはあらわれませんが、身体の中でおこってくる変化としては、骨の吸収促進や、肝臓への影響、物忘れ、計算力の低下、皮膚粘膜の萎縮などがあり、骨粗しょう症、高脂血症、アルツハイマー病、萎縮性膣外陰炎などの基盤となります。
完全に閉経してしまってからは、子宮頸がん・体がん、乳がん、などにもかかりやすくなり、また、動脈硬化症、糖尿病、肥満などメタボリックシンドローム生活習慣病甲状腺の病気なども増えてきます。
日本女性の平均寿命を考えると、完全閉経後も約30〜40年の老年期の期間がありますので、この老年期を楽しく生活するという意味でも、この時期の健康管理は非常に大切なものとなります。中高年の女性のQOLの向上がこれからの大切な医療のひとつなのです。

では、更年期障害にはどのような治療法で対処すればよいのでしょうか。

漢方薬 副作用が一般的に少なく、投与しやすいお薬です。 当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝伏苓丸など
植物性エストロゲン 更年期症状を改善しやすいものですが、きっちりした投与量が決まっていないところが短所です。 イソフラボン、リグナンなど
ビスフォスフォネート製剤 骨吸収を抑制して骨粗しょう症を予防します。消化器症状がでることがあります。 エチドロネート、アレンドネート、リセドロネートなど
選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM) 骨粗しょう症の治療薬です。消化器症状は少ないです。 ラロキシフェン
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤) 女性ホルモンが低下することによって、血液中のセロトニンが下がることによりおこる精神症状に効果があることが多いです。 パロキセチン
ホルモン補充療法 足らない女性ホルモンを補充してやる方法です。 エストロゲン、プロゲステロン







プチ更年期や体重減少その他による無月経

閉経とは、12ヶ月完全に生理がおこらない状態をいいますが、必ずしも1年生理がこないからといって絶対更年期とまではいいきれません。
ストレス(精神的・肉体的)や薬、などによって女性ホルモンが一時的に抑制されて見かけ上閉経状態になることもあります。
こと、ストレスによる無月経とは、女性が自分自身を守りきれないときにおこります。
いいかえれば、もともと女性ホルモンの目的は、排卵をおこして妊娠するために作られることがひとつの大きな意味を持っています。(もちろんそれだけではないですが)しかし、妊娠とは、ある程度体に余裕がないと不可能です。
妊娠も体にとって負担になりすぎると脳が判断したときに、自分の体を守る最低限のエネルギーを確保するために、直接生命を維持するための部分が先行されるために女性ホルモンの分泌まで余裕がないときに、見かけ上の無月経が起こりがちです。
いいかえれば、そのような環境や生活自体が改善されるだけでまた年齢相応の女性ホルモンが分泌され、生理が始まることも多いのです。これは更年期に近い年齢の女性だけでなく、若年の10代、20代やもちろん他の年齢の女性みなにあてはまるのです。

なお、本格的な更年期にはいっておられるかどうかは、血液検査である程度わかります
血液中の女性ホルモンなどの検査結果によって診断するのですが、一度だけの測定では必ずしも更年期といいきれないこともありますので、必要に応じて数回の血液検査をすることもあります。(そのかたのそのときの環境などによって変化するときもありますので、1回だけの測定で絶対更年期といいきれないときがあるのです。半年後くらいに測定すると女性ホルモンの値が復活しているときもあるのです。)